MOVEMENT IN SILENCE
Movement in Silence 不完全な美しさ
エレガントな曲線が特徴的なフリッツ・ハンセンのチェア、リリー。アルネ・ヤコブセンの傑作の一つとして賞賛されるこのチェアは、快適な家具としての機能性と、優れたクラフツマンシップが反映された美しいフォルムを備えています。デンマーク人デザイナーのデザインへの献身と革新的なアプローチへのオマージュとして、工芸とデザインの世界で存在感を示す韓国の5人のアーティストが、リリーの50周年アニバーサリープロジェクト「Movement in Silence」に招かれました。
5人のアーティストは、アルネ・ヤコブセンのリリーの創造的で魅力的なデザインを独自に解釈し、韓国的でありフォルムではダイレクトに表現することのできない静かな美しさを模索しました。控えめでありながらも鮮やかな韓国の美学。アイデアを表面的に表現するのではなく、クリエイターの感性を通してその可能性を最大限に引き出し、観るものを深い鑑賞へと導きます。リリーのフォルムは、アーティストが彼らのデザイン哲学、構造美学、反復的な主題、慣れ親しんだ制作方法と新しいテクノロジーを表現するためのフレームワークとなりました。ミニマルかつ暗示的に表現されるコンセプトは、洗練、虚空、拡張、および反復です。このプロジェクトの美しさを視覚的にだけでなく、記憶や直感などを含めた全身の感覚を通して捉え、体感していただけることを期待しています。

Kyungwon Baek(ペク・キョンウォン)
White Chair(ホワイトチェア)
2020年
粘土、コーンスターチ
80 x 50 x 50 cm
技術デザイン:Jongdae Ryu(リュ・ジョンデ)
アルネ・ヤコブセンの自然に対する関心の深さを表すチェア、リリー。「White Chair(ホワイトチェア)」は、リリーのフォルムの背景にあるものに焦点を当てています。チェアの上部は花を連想させ、ベースは植物の茎を表現しています。重なり合う円錐が作る幾何学的形状の規則性に、自然界に見られる構造が反映されています。この作品は、ベクが長年の修練により培った高い技術を使い、粘土を積み重ねてつまむ手法で作られています。ベース部分とは対照的に、チェアの上部は3Dプリントにより元のフォルムが維持されています。手の粘土への圧力は表面の質感として表れます。このパターンは3Dプリンターの反復的な動きによって作品上に再現されています。この作品では、手でアート作品を制作することの親しみやすさにテクノロジーが組み合わされ、調和のとれた質感の自然なフォルムが作り出されています。
kyungwonbaek.com







Rahee Yoon(ユン・ラヒ)
2020年
アクリル
83 x 54 x 49 cm
「Block Chair(ブロックチェア)」を構成する内側を手染めした透明なブロックが、チェアに繊細でありながらも深遠な印象を生み出しています。アルネ・ヤコブセンのありふれた素材を生まれ変わらせる能力、彼の実験的なアプローチ、そしてシンプルなフォルムに触発された「ブロックチェア」。このチェアには、ユンが蓄積した実験技術と洗練された印象の表現力豊かなアクリル使いを見ることができます。南アフリカ原産のアガパンサスの細く濃いブルーの花びらが、根源的かつ抽象的にヤコブセンのデザインスタイルを継承していることを表現しています。
raheeyoon.com






Ledongil(イ・ドンイル)
Primeval Chair(プライミヴァルチェア)
2020年
アルミニウム
83(H) x 54(W) x 49(D) cm
「Primeval Chair(プライミヴァルチェア)」は、50年前にアルネ・ヤコブセンがリリーを考案した時点−不完全でありながらも可能性に満ちた初期の段階−を表現しています。原始的な生産方法を想起させるために、古くからの製造方法である鋳造が採用されました。制作過程で表面には自然な表情が生まれ、チェアの周りのアルミニウムのかたまりが硬化し鋳型の跡が見られるようなり、結果として予期せぬ不完全なフォルムが生まれています。オリジナルのプロトタイプを想起させ、リリーが最終的に完成するまでの段階的な完成度を感じさせるために、シート部分は意図的に取り除かれています。
ledongilworkshop.com






Jungjoo Im (イム・ジュンジュ)
Volume Chair(ボリュームチェア)
2020年
アッシュ材
93.5(H) x 60.5(W) x 60(D) cm
「Volume Chair(ボリュームチェア)」は、リリーの対称的なバランスから着想を得ています。リリーのプロトタイプをインスピレーションとして、このチェアはフォルムの境界を押し広げました。ウッドを重ねてカッティングする工程で生まれたチェアの厳かなフォルムには、リリーの流れるような曲線が反映され、観るものにリリーを想起させます。一連のプロジェクトの一環である「ボリュームチェア」は、点、線、平面に任意の軸を使用して立体的な図形を作成しています。
jungjooim.com







JAERYO (ジェリオ)
Paper Chair(ペーパーチェア)
2020年
張り子、オッチル(漆塗り)
80(H) x 52(W) x 53(D) cm
リリーのデザインと製作に際して、アルネ・ヤコブセンは自身の技術を高め、試作を繰り返したに違いありません。しかしながら、私たちが目にするのは最終的なチェアの姿のみです。「Paper Chair(ペーパーチェア)」はこの製作プロセスを隠喩的に捉え作品として表現しています。チェアの制作工程では、まず枠を組み、パルプを薄く均一に広げてフォルムを成形し、乾燥させた後に湿度の高い環境で漆を塗る作業が行われました。柔らかくしなやかなパルプに漆が塗り重ねられて層を成し、結果としてこのチェアが誕生しました。
jaeryo.com






