——デザインに初めて興味を持ったのはいつのことですか?
私は、チーク材を使った家具を手がける家具工場で育ったと言えます。当時は、いくつかの家具をデザインしたり、家具職人としての技
術をブラッシュアップしたりしていました。試行錯誤しながらデザインし、試作品を作っていたのです。こうした経験は、デザインのニー
ズについて多くのことを教えてくれました。
—創造性という点であなたにもっとも大きな影響を与えた人は?
まだ学生だった頃、スコットランドのグラスゴー芸術大学を訪れたときにチャールズ・レニー・マッキントッシュ(グラスゴー生まれの建
築家、デザイナー、画家。19世紀のアーツ&クラフツ運動の推進者のひとり)のスケッチの原本を見せてもらいました。私にとっては、ま
さに啓示の瞬間でした。当時は、誰もが自由にマッキントッシュの作品を見ることができました。そのおかげで、彼のアーカイブを探索
しました。マッキントッシュの作風はグラフィカルかつ平面的で、立体的な作品を手がけていた当時の私に、デザインに応じた機能を
加えていくというインスピレーションを与えてくれました。マッキントッシュのほかにも、ハンス・J・ウェグナーとボーエ・モーエンセンが
デザイナーとしての成長に大きな影響を与えました。
——ご自身のデザインの特徴とは?
形と素材が優れたデザインに欠かせないのと同じように、私たちの生き方——具体的には、日常生活における家具の使い方——も重
要な要素です。いままで数々のアウトドア家具のデザインを手がけてきましたが、国や文化、さらには時代によって使い方が変わること
を理解できるようになりました。
—「トラディション(Tradition)」の制作には、どれくらいの時間を要しましたか?
トラディションは、住宅の庭園のためのモジュラーシステムとして2015年に考案した作品です。さまざまな方法で組み合わせられる
ため、庭園に限らず、幅広い空間でも活躍します。考案された当時はアルミニウムを使っていたため、いまとはまったく違う表情でし
た。そんなトラディションを金属ではなく木材で再現することは、思っていたよりもチャレンジングでした。サイズを調整し、当初とは違
う技術を取り入れました。ウッドは素材本来の美しさを保つだけでなく、快適さとタイムレスな美しさを兼ね揃えたデザインを叶える
ために成形されています。
——この作品のスタイルのインスピレーション源は?
トラディションは「スピンドルチェア」というイギリスの伝統的な木製椅子を現代風にアップデートしたものです。この作品がミッドセン
チュリー家具からも影響を受けていることも明白です。機能性と視覚的な美しさという点では、デンマークのデザイン史からインスピ
レーションを受けています。同時に、家具デザインを通じて休息と安らぎを提供するパーソナルスペースづくりもヒントになりました。
—制作中に直面した課題などがあれば、ぜひ聞かせてください。
ガーデンファニチャーには、デザインと素材の両方の要素が不可欠です。快適さはもちろん、あらゆる天気にも耐えられるような、長く
楽しめるデザインでなければいけません。トラディションの場合は、特に角のモジュール部分に苦労しました。シームレスなジョイント
を加えて背面とアームレストを成形し、流れるようなデザインを実現するには、高度な職人技が必要だったのです。すっきりとした見た
目を実現すると同時にひび割れを防ぐためにも、「大入れ継ぎ」という接合方法を使って木口面を隠すのも重要でした。