「クランペンボーチェア」は、フリッツ・ハンセン社とアルネ・ヤコブセンの卓越したコラボレーションの記念すべきスタートです。
1930年代半ば、建築家およびデザイナーのアルネ・ヤコブセンは、コペンハーゲンの北に位置するクランペンボーのベルビュー地区を舞台とする一大プロジェクト、「ホワイト・シティ」に取り組んでいました。ヤコブセンが手がけた作品の多くは、いまもランドマークとして残っています。ヤコブセンは、ベルビュー・シアター、ベラヴィスタ集合住宅、ベルビュー・ビーチの施設を設計しただけでなく、チケットから椅子に至るまで、ほぼすべてのデザインを自ら手がけました。
こうした点を踏まえると、1934年にベルビュー・シアターのレストランの椅子としてデザインされたクランペンボーチェアは興味深い作品です。この椅子は、素材使いにおいても革新的で、同じ時代の張り地を使った椅子よりも低コストでした。クランペンボーチェアは、フリッツ・ハンセン社とアルネ・ヤコブセンがともに開発した最初の椅子でもあります。正真正銘の卓越したコラボレーションは、この椅子から始まったのです。