フリッツ・ハンセン(以下、FH):このプロジェクトにおける空間デザインのねらいは何ですか?
ジョルジョ・ビアンキ(以下、GB):ねらいは、生命の美しさを称える空間をつくることでした。クライアントは、企業の世界と地元コミュニティとの境界線を最小限にしたいと考えていました。そのため、透明性とオープンさが鍵でした。地上階は、「内」と「外」の境界線を曖昧にするデザインになっています。ここの社員食堂は、従業員とゲストである地域の人々が楽しむ空間なのです。このほかにも、無限の可能性を秘めた講堂は、講演会、公共イベント、クライアントのワークショップといったさまざまなイベントの舞台となります。
クラウス氏はアートコレクターです。ですから、建物内にはアートがあふれています。あるとき、私はクラウス氏に「どうしてアート作品に展示ラベルを付けないのですか?」と尋ねました。すると彼は「あなたは、自分の家に展示ラベルを付けますか? 付けませんよね。家はアートであり、この場所は私の家でもあるのです」と答えました。クラウス氏は、先見性に満ちた人物だと思います。彼は働くための空間だけでなく、この建物の魂でもあるオープンで重要な中庭とともに生きることを楽しむささやかな場所を求めていたのです。